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コノフィツムとはどのような植物か?

  花屋さんや、ホームセンターなどの店頭で、ミニサボテンやミニ多肉植物として丸々した植物が販売されているのを見かけたことはありませんか? サボテンにしてはトゲが無くて変な形・・・大抵の場合、それはコノフィツムやリトープスで、その他の近縁種も合わせて「玉型メセン」と総称されることもあります。例外もありますが、大半のコノフィツムは緑色(表面に模様のあるものもあり)なのに対して、リトープスは薄茶色〜灰色で表面に模様があるものがほとんどです。

  コノフィツムとリトープス、どちらも南アフリカの岩石砂漠が故郷の多肉植物です。雨期である冬と乾期である夏にあわせて生長と休眠を繰り返すため、夏生育型のサボテンや多肉植物と同じように管理していると上手く育てることが出来ず、多くの場合、1年以内に枯らすか腐らせてしまいます。日本には昭和初期に導入された植物ですが、今もって正しい栽培方法を紹介している書籍等は少なく、栽培が難しい植物とされることが多いようです。しかし、生育パターンを覚えれば栽培は極めて容易なものです。

  販売されているコノフィツムは、2〜6頭くらいのものが多いのですが、毎年2〜3倍に増殖しますから数年後には数十頭の群生株になり、開花期には見応えのあるものになります。是非栽培方法をマスターして、この生ける宝石達をお楽しみください。

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 コノフィツム ‘清姫’          リトープス(Lithops lesliei ?)        リトープス ‘朱燕玉’

変な形だけど何の仲間?

  日本では花壇などで良く見られるマツバギクに近縁の植物です。植物分類学的にはハマミズナ科(Aizoaceae)に属するとされています。かつて、ツルナ科、ザクロソウ科、あるいはメセンブリアンテマ科と呼ばれたこともありますから、こちらの名前で覚えている方も多いと思われます。ハマミズナ科の植物は、程度の差はあるものの葉が多肉化し、乾燥に耐えられるようになっていて、特にコノフィツムやリトープスでは、一対の葉が著しく多肉化し、球のような形になったものと理解されています。この姿形から、玉型メセン(玉型になったメセンブリアンテマ科の意味)とも呼ばれます。趣味家は、一対の葉を「球体」と呼び、「1頭、2頭・・」と数えます。なお、タビ型種の葉は球形ではありませんが、便宜上「球体」と呼ぶことが多いようです。

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写真:マツバギクの一種(Delosperma cooperi ?)

 所謂「マツバギク」は、本属の他、Lampranthus属, Drosanthemum属等の植物の総称です。同じ「松葉・・」という名前を持つ、マツバボタンと間違われる事が多いようですが、マツバボタンはスベリヒユ科の植物です。花弁の形が随分違いますね。

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写真:花蔓草(Aptenia cordifolia

 ここ数年、あまり手の行き届いていない(?)花壇や空き地、道路脇などで盛んに繁茂しているのを見かけることが多くなったように思います。これらの乾燥しがちな場所でも、盛んにつる(茎)を伸ばし、開花し続けます。冬には霜等でダメージを受けるようですが、春からは急速に復活して、7月までには復活し、ツヤのある葉で地面を覆い尽くします。マツバギクのように一度に開花することが無いので、観賞用としてはちょっと物足りないかも知れません。原産地は、やはり南アフリカです。

多肉化のしくみ

  同じメセンの仲間でも、上記の花蔓草やマツバギクのように茎と多数の葉を持つ種類があります。玉型メセン類では対生する一対の葉が多肉化して球形になったものと考えられます。

  それでは新芽や花はどこから出てくるのでしょうか?? 秘密は球体の内部に隠されています。球体の付け根部分に生長点があり、そこに年に一回だけ花と新芽が作られるのです。新芽は生長期に球体内部で生長・肥大し、休眠が始まる初夏までに親とほぼ同じ大きさになります。この頃には親球は皮だけになって新球を包むようになり、休眠期間中新葉を強い日照や乾燥から新球を守ります。そして休眠開けには役割を終え、茶色い殻となって脱ぎ捨てられます。また、花は球体内部の隙間を上って頂部から現れます。ちなみに親球とか子球などと呼ぶことがありますが、同じ個体の古い葉と新しい葉ですから世代交代している訳ではありません。

  鉢栽培では、見た目に綺麗になるように殻を取り除いてしまうことが多いのですが、自生地ではそのまま茎に残存しマット状になるようです。このマットは吸水しやすく、水分を蓄える役目を果たしているように思えます。

自生地は南アフリカ

  ほとんどの原種は南アフリカに自生しており、ナミビア南部にも若干自生しているようです。年間降水量は250mm前後で、関東平野部(1500~2000mm)の約1/6~1/8という乾燥した環境に耐えるため、高度に多肉化しています。
  また、表面の模様は動物類による食害から身を守るための擬態と考えられていて、自生地では周囲の土や小石の色や形に似ている場合もあるようです。さらに、アルカロイドの一種を含んでおり、これも生体防御に役立っているかも知れません。

約170種の原種と400以上の園芸品種

  原種だけでも約170種が知られ、その他に原種からの優良個体選抜や人工交配で作出された園芸品種が多数存在しています。園芸の分野では、球体の形によって、タビ型・鞍型・コマ型・有窓類などに分類しており、さらに球体の大きさや表面の紋様・花の色や形・昼咲き・夜咲きなど、まさに千差万別と言って良いほど変化に富んでいます。また、夜咲き種の中には香りのあるものも多くあります。小さい植物ですから狭い面積でも沢山置くことができ、多様なコレクションを楽しむことが容易な植物です。

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   タビ(足袋)型       クラ(鞍)型       コマ(独楽)型       コマ型(紋様系)        有窓類

体形による分類

栽培は難しい?

  温帯乾燥地域の多肉植物ですから、基本的には手間のかからない植物です。

  乾期と雨期がある地方の植物で、降水量の多い冬(低温期)に生長し、乾期である夏(高温期)に休眠するという年間生長サイクルを持っています。休眠期は乾燥気味に管理する必要があるため、雨を避けられて日当たりが良い場所で栽培するのが良く、マンションのベランダや南向きの軒下が適当な栽培場所です。寒さにも強いので、氷点下2℃以下にならない地方なら加温施設(温室)は必要ありません。

  水やりは秋から春にかけての生長期で毎週1回程度、夏の休眠期には月に2回程度です。そのため、出張が多い人や平日に水やりの時間がとれない人でも安心して栽培出来ます。