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女仙の沼.jpg

挿し穂の茎はどれくらい残すのが良いか?

挿し穂の調整と挿し木

 挿し木する時、茎をどれくらい切り詰めるのか悩むところですので、タビ型の園芸品種を使って比較実験してみました。残す茎の長さを、0mm、3mm、6mm、10mmとして発根率の違いを比較しました。下の写真が材料とした株です。

挿し木材料株.jpg


 左端は茎を意図的にもぎ取ったもので、続いて左から0mm、3mm、6mm、10mmの順です(下写真)。茎はカッターでカットしました。

茎の切り戻し.jpg

 これら挿し穂を屋内で2日間乾燥させた後、十分水分を含ませた赤玉土微粒(粉を抜いた芝の目土)に挿しました。球体の下部1cm弱を土に埋めて倒れないようにしました(10月上旬)。

挿し木テストの様子.jpg

結果

 挿し木後18日に発根率を比較しました(10月下旬)。上段(+記号)は発根が見られたもので、下段(ー記号)は発根していなかったものです(下写真)。

茎の長さ結果.jpg

 残す茎の長さが長くなる程、発根率が悪くなる傾向にあるようです。0mmと3mmの差はあまり無いようで、球体ギリギリまで切り詰めても構わないようです。茎を長く(10mm)残したものは、18日間では全く発根しませんでした。茎をもぎとったものは、5本中2本が腐ってしまいました。続いて、茎をもぎ取ったものの発根の様子を観察してみました(下写真)。白矢印で示したのが根です。発根した根は、茎を取った部分に円周状に分布しているのが判ると思います。茎の中心部(髄)には維管束がありませんから、ここからは発根しないわけです。このことは、茎を残したものでも同じです。

発根の様子.jpg

 さて、茎を10mm残したものはどうなっているのでしょうか?茎の縦断面を観察することにしました(下写真)。まず気がつくのは、切り口から2mmほどは腐ってしまっているように見える事です。茎の内部が白く確実に生きていると思われるのは、球体付け根から4〜5mmくらいまでで、その先は生きているかどうか判然としません。切り口の腐りが徐々に球体側に進んでいる途上にも見えます。また、長く残した茎の表皮に白いカビが生えていて、菌糸が培養土にまで生長した結果「土団子」状になっている個体が、6mm区、10mm区で複数見られました。古くなった茎の表皮やコルク層は死んだ細胞から出来ており、茎を長く残した区では、これがカビの栄養源になったのでしょう。カビがあまり蔓延ると、健康な部分にまで害を及ぼすことが考えられ、このことが6mm区、10mm区での発根率の悪さにつながっているのかも知れません。老化が進んだ部分からは発根しにくいという可能性もあるでしょう。いずれにせよ、茎を長く残しておくことによって悪影響があってもメリットは無いと考えて良さそうです。つまり、芯の白い部分云々は気にせず、球体ギリギリまで切り戻して挿すのが良いという事になります。

挿し木後の茎内部.jpg

結論

 1.挿し木する時は、茎を球体ギリギリ〜3mmくらいに切り詰める。
 2.切り口は2日ほど乾燥させた方が良さそう。
 3.もげてしまった球体も、挿しておけば半分くらいは発根する。